有機溶媒と超臨界二酸化炭素の抽出

 後藤研究室では,「環境に配慮した分離・反応プロセスの新規開発」を目指して研究を行っており,「超臨界流体」というグリーン溶媒を利用して,天然物からの有効成分の抽出,未利用または廃棄バイオマスの有効利用など様々な分野での研究を展開してきました。
その中でも特に,超臨界二酸化炭素を用いた技術は,安心・安全を追及する食品の分野で非常に注目されているテーマとなっています。
 従来,目的成分の抽出/除去では有機溶媒を用いた処理が広く行われてきましたが,溶媒分離工程や 廃液処理,残留溶媒など,環境や人体への影響が問題となっていました。これらの課題を解決する一手法として,無毒無臭で,比較的マイルドな温度圧力条件で操作可能な超臨界二酸化炭素を用い,高品質で安全性の高い抽出プロセスの開発を行っています。 

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 超臨界技術センターは,平成元年以来行っている超臨界二酸化炭素抽出に関する研究の成果を社会実装することを目的に設立された会社であり,設立以来,技術顧問として研究開発に関与してきました。さらに,名古屋大学と超臨界技術センターは共同研究契約を締結しており,特に,コーヒーの脱カフェインを対象に,前処理~超臨界二酸化炭素抽出(脱カフェイン)~後処理の統合プロセスを完成させ,日本初のデカフェ事業を可能としました。

(LINK)http://www.sctc.co.jp/extraction/

二酸化炭素の臨界について

CO2は常温・常圧では気体である。

この状態では物質を溶かすことはできない。臨界温度以上(31°C)以上の温度で

圧力を高くするとCO2の温度が高くなリ臨界圧力を(7MPa)超えると

SC-CO2(Supercritical carbon dioxide)になる。

SC-CO2は高密度流体状態で(密度200〜1000kg/m2)液体に似た性質を持ち

物質を溶かすようになる。

 

 

 

有機溶媒と超臨界二酸化炭素の抽出・前処理の比較

超臨界流体抽出法(Supercritical Fluid Extraction, SFE)は、目的成分が含まれる対象物に抽出媒体とする超臨界流体を加え、溶解度の差を利用して抽出操作を行う手法です。特に超臨界二酸化炭素を抽出媒体として用いる方法は多くの利点を有しているため、様々な分野で利用されています。

超臨界二酸化炭素を用いる抽出は、有機溶媒抽出法と比較して時間の短縮や操作の簡略化、抽出効率の改善が期待できると同時に、抽出後の溶媒除去・濃縮操作が容易になります。また、二酸化炭素の臨界温度が 31℃程度と低いため、室温に近い状態での抽出ができ、さらに酸素の存在しない二酸化炭素雰囲気下の状態で抽出ができ、温度に不安定な物質や酸化されやすい成分に対して利用することができます。近年では、グリーンケミストリーで提唱されている有害な有機溶媒を使用しない環境に優しい抽出法として注目されています。