着々と脱化石燃料化が進んでいる

水素事業に乗り出したロシア、目指すは環境に優しい天然ガスをヨーロッパに提供すること

https://pro.tanaka.co.jp/elements/news_cred_20190201_05.html

より抜粋

水素の製造技術は、水の電気分解を含めて、いくつか開発されつつあるが、ガスプロムが検討しているのは、「メタンの熱分解」として知られる方法だ。

メタンの熱分解では、小型リアクター内で高圧をかけられた低温の非平衡プラズマのなかで水素を発生させる。ガスプロムは、シベリアにある都市トムスクでこの技術を試験中だ。

ガスプロム・ドイツの広報担当マクシミリアン・クーンは、2018年11月初めにベルリンで行われた会議で、「ロシアからの天然ガスは、いまでは、ヨーロッパで入手できるもののなかで最も純度が高い」と述べた。「私たちは、ドイツがパリ協定の削減目標を達成するには、天然ガスが解決策であることを認識してもらうべく提案している。天然ガスによって、私たちは目標を達成することができる」

このプロセスでは酸素との接触がないので、水素原子が天然ガスから分離される際に、CO2が排出されることはない。この手法であれば、純粋な水素が次々と製造されるうえに、炭素は、CO2として空気中に放出される代わりに固体となって除かれる。固体炭素は産業利用が可能だ。

こうした工程に必要なエネルギーを、風力発電あるいは太陽光発電でまかなえば、水素の製造過程における炭素排出はゼロになる。

ニューヨークにある研究機関ブルームバーグ・ニュー・エナジーファイナンス(NEF)のアナリスト、クレア・カリーは、「ガス会社は現在、当惑し、不安を抱いている。再生可能エネルギーのコストが下がり、電気暖房の利用が拡大し、ヨーロッパ各国が非常に強力な水素政策を採用していることから、ガスのインフラ全体が不要になる可能性があるためだ」と話す。

「炭素を低コストで回収できるのなら、それは興味深い。ただし、課題もある。人々が自宅に水素を置きたがるかどうかはまだわからない。また、(この方法では)ヨーロッパはエネルギーを自給できるようにならない」

ガスプロムは今後数十年で、炭素を排出しないタイプの水素を自社事業に取り入れていきたい考えだ。実現すれば、ヨーロッパは2050年までに、温室効果ガスの排出量を62%削減することができるだろう。2050年までに温室効果ガスを1990年比で80%削減することを目指していることを思えば、これは大きい。

ガスプロムはそのために、次のような3つのステージを提案している。

ステージの1つめは、すでに進められている。それは、発電所と自動車それぞれに使用される燃料を、石炭ならびに石油から、ガスに移行することだ。2つめのステージでは、天然ガスと混合する水素の量を増やしていく。

Thinkstepによると、いまのところ、ガス供給網に混合できる水素の上限割合は国によってまちまちだ。例えば、イギリスの場合はゼロだが、オランダは12%だ。大部分の施設では、水素の混合割合が最大で20%までなら問題がなく、インフラの変更も不要だとガスプロムは説明する。

パイプライン網で使用される水素の割合が25%を超えると、スチール製パイプの亀裂抵抗力(破壊靭性)が下がる可能性があり、30%を超えるとタービンやコンプレッサーを調整する必要性が出てくるかもしれないとThinkstepは話す。

「パイプライン網で使われる水素の割合を高くするには、パイプラインならびに規制に変更を加えなくてはならない」とブルームバーグNEFのカリーは述べる。

ガスプロムはいまだに、このビジネスが今後どう進化していくかを思案中だ。ガスプロムの専門家は、ヨーロッパで水素を製造して、そこにロシアから届いた天然ガスを混合する方が、採算がとれるかもしれないと話す。

 

アメリカの水素エネルギー利用への取り組み
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より抜粋

 

アメリカでは、ブッシュ大統領時代の2002年からFCVと水素エネルギーの実現に向けて政府が本格的な開発支援を行っています。米国での水素・燃料電池政策の中心的組織はエネルギー省(DOE)ですが、その他にも運輸省(DOT)や国防総省(DOD)も資金を投入してきました。
米国での水素エネルギー開発の大きな理由の一つがエネルギーセキュリティで、石油の脱他国依存の一環としてFCVの研究開発が行われてきました。その一方で、家庭用や業務用の燃料電池の研究開発は限定的なものにとどまりました。
米国50州のうちで最も熱心にFCV普及と水素ステーション整備に取り組んでいるのがカリフォルニア州です。カリフォルニア州では、自動車に対する二酸化炭素も含めた排ガス規制「ゼロエミッションビークル(ZEV)規制」を2009年から実施していることもあり、水素ステーションの建設などのインフラ整備にも積極的です。カリフォルニア州のブラウン知事は2013年9月にクリーン自動車の利用拡大を定めた州法に署名し、州内で100か所まで水素ステーションを整備するとし、このために毎年2000万ドル(24億円)を投じることを発表しました。2016年1月現在ではカリフォルニア州内で17か所のステーションがオープンしており、2017年までに51か所が2023年頃までに100か所が整備される予定です。
なお、カリフォルニア州の助成を得て設置される水素ステーションは、33%に相当する水素供給量を再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオマス等)由来とすることが定められています。
また、カリフォルニア州東海岸地区の7州で、燃料電池自動車を含めたゼロエミッションビークル(ZEV)を合計330万台導入するという覚書もかわされており、これら各州が先頭となりアメリカでの燃料電池自動車の普及が進められつつあります。
このカリフォルニア州水素ステーション整備の動きを全米に広げるために、2013年9月にはエネルギー省と自動車メーカー、燃料電池水素エネルギー協会による官民パートナーシップ「H2USA」が立ち上がりました。2020年までにはアメリカ全土に水素ステーションを建設する計画です。

 

韓国の水素利用への取り組み

ロサンゼルスでリース販売されている現代自動車のTucson ix Fuel Cell(写真提供: CaFCP)

韓国の現代自動車は、Tucson ix Fuel Cellのリース販売を、2014年6月から米国ロサンゼルス地域で開始しました。また欧州にもリース販売をしており、2015年末までに600台のFCVを量産しています。
韓国には現在12か所の水素ステーションが稼働しています。目標としては2015年中に43か所、2020年には168か所の設置が掲げられています。
韓国のPoscoは、米国のFuelCell Energyよりライセンスを受け、産業用の炭酸溶融塩型燃料電池(MCFC)の360MW級の製造プラントを平澤市に建設しています。

 

水素の製造方法

現在、今日生産されている水素のほとんどは、水蒸気メタン改質と呼ばれるCO2集約プロセスを通じて生産されています。
高温蒸気(700°C〜1,000°C)は、天然ガスなどのメタン源から水素を生成するために使用されます。水蒸気メタン改質では、メタンが触媒の存在下で3〜25 barの圧力(1 bar = 14.5 psi)で水蒸気と反応し、水素、一酸化炭素、および比較的少量の二酸化炭素を生成します。水蒸気改質は吸熱性です。つまり、反応を進めるためにプロセスに熱を供給する必要があります。
その後、いわゆる「水性ガスシフト反応」では、一酸化炭素と蒸気が触媒を使用して反応し、二酸化炭素とより多くの水素が生成されます。 「圧力スイング吸着」と呼ばれる最終プロセスステップで、二酸化炭素と他の不純物がガス流から除去され、本質的に純粋な水素が残ります。水蒸気改質は、エタノール、プロパン、またはガソリンなどの他の燃料から水素を生成するためにも使用できます。

化学者向け:

水蒸気メタン改質反応
CH4 + H2O(+熱)→CO + 3H2

水性ガスシフト反応
CO + H2O→CO2 + H2(+少量の熱)

バイオガス用の水蒸気メタン改質(SMR)
SMRのプロセスは、バイオガスからの水素の生産にも利用できます。
電解

電解槽
水素はさまざまな方法で生産できるという事実にもかかわらず、最も興味深いが有望な部分は、水の電気分解による水素の生産です。

このプロセスでは、電気分解により、電気を使用して水を水素と酸素に分解します。使用する電力が風力や太陽光などの再生可能エネルギー源から発生し、生成された水素が燃料電池で使用される場合、エネルギープロセス全体で正味の排出量は発生しません。この場合、「グリーン水素」について話します。

電解槽は、DC電源と、電解質で分離された2つの貴金属コーティング電極で構成されています。電解質またはイオン伝導体は、液体、例えばアルカリ電解用の導電性苛性カリ溶液(水酸化カリウム、KOH)とすることができます。
アルカリ電解槽では、陰極(陰極)は水溶液への電子を失います。

水は解離し、水素(H2)と水酸化物イオン(OH –
電荷キャリアは電解質内をアノードに向かって移動します。アノード(正極)で、電子はマイナスのOH –アニオンに吸収されます。 OH –陰イオンは酸化されて水と酸素を形成します。酸素はアノードで上昇します。膜は、生成ガスH2とO2の混合を防ぎますが、OH –イオンの通過を許可します。電解槽は、個々のセルと中央システムユニットで構成されます(植物のバランス)。電解セルとスタックを組み合わせることにより、水素の生産を個々のニーズに適合させることができます。

電解槽は、電解質材料と作動温度によって区別されます:アルカリ電解(AE)、プロトン交換膜(PEM)電解、および陰イオン交換膜(AEM)電解(別名:低温電解(LTE)アルカリPEM)、および高温電解(HTE)。後者のグループには、特に固体酸化物電解(SOE)が含まれますが、これはまだ高度な研究開発段階にあり、製品はまだ市販されていません。市場の成熟に達すると、その利点には、変換効率の向上と、合成液体燃料などのさまざまなアプリケーションで使用するための蒸気とCO 2から直接合成ガスを生成する可能性が含まれることが期待されます