セルロースバイオマスを糖に変換できるサッカロファガス デグラダンス

 

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エタノール[編集]

エタノールは、サトウキビやトウモロコシといったバイオマスからの生産方法が確立しており(バイオマスエタノール)、そうした方法による生産量が拡大していることもあって「環境に優しい」ガソリン代替燃料としてとくに近年注目されている。また、ガソリンと比較してノッキングを起こしにくいことから、ガソリンの改質剤として利用が拡大しているという事情もある。なお、ガソリンとの混合燃料としては、エタノールそのものではなく、エタノールから生成したエチルtert-ブチルエーテルETBE)を添加したガソリンも広義のアルコール燃料と理解されている。

純粋のエタノール無水アルコール)は、ガソリンと容易に混合する。このようにして作られる混合燃料については、エタノールの百分率で表した容積比をxxとして、Exxという形で品質が示される。たとえば、E10といえばエタノールを容積比で10%含む燃料である。このようにエタノールとガソリンを混合した燃料は、ガソホール(gasohol)と呼ばれるが、エタノールとガソリンの混合比率は国あるいは地域ごとに異なっている。

エタノールとガソリンは燃焼特性が異なるが(上記参照)、エタノールの混合比率が低い混合燃料の場合、純粋なガソリンを燃料として利用することが想定されている内燃機関で燃焼しても問題が生じにくいとされている。もっとも、どの程度の比率が許容できるかは、社会に普及している内燃機関の特性に左右されるので、一概に線を引くことはできない。たとえば、ブラジルではE25で支障が生じないようになっているのに対し、米国ではE10が上限と理解されている、また、日本政府は、E3が安全性を確保できる上限としており、2007年4月末から東京都、千葉県および埼玉県で先行販売が開始されたエタノール由来成分混合ガソリン(「バイオガソリン」)でも、エタノール由来成分(ETBE、上記参照)の含有量は容積比で3%相当となっている

ガソリンのオクタン価向上剤としてかつて使われていたアルキル鉛は有害だったので代替のオクタン価向上剤が必要だったのと、アルコール/エーテルなどの含酸素燃料をガソリンに混和すると排気ガス窒素酸化物濃度が減るので、1990年代欧米ではMTBEのガソリンへの添加が進んでいた。しかし、カリフォルニアの田舎町で老朽化して穴のあいた地下タンクから漏洩したガソリンに添加されていたMTBEが、飲料に供されていた地下水に混和して飲用不適になってしまう事件が起こり、米国では2014年までにMTBEのガソリン混和は禁止される事になってしまい、MTBE代替のガソリン混和材としてエタノールの需要が急増した。(詳細 メチルtert-ブチルエーテル参照)

ただし、アルコールは水和物で一種の界面活性剤として働き、アルコール混和後の石油は水を懸濁しうるため、水の混入を避けるために、エタノール/メタノール/ETBE/MTBEとも石油に混合後はパイプライン輸送ができない。米国では石油パイプライン輸送をする場合、末端の油槽所でブレンドするため別途エタノールを輸送せねばならない問題が発生している]

なお、エタノールの混合比率が高い燃料を内燃機関の燃料として利用する場合には、点火のタイミングなどを調整しなければ十分な性能が発揮できない。いろいろな混合比率の燃料を利用できるようにした自動車は「flex-fuel vehicles」と呼ばれており、とくにブラジルで広く普及している。ちなみに、ブラジルのflex-fuel vehiclesはE100まで対応できるのに対し、米国で販売されているflex-fuel vehiclesはE85までの対応に止まっており、ここでも国ごとの違いが表れている。

なお、地球温暖化対策などを念頭に、市中で販売されるガソリンに一定比率でのエタノール混合を義務づける国や地域が増えている。たとえば、ブラジルではE20が基本であり、米国でもコネチカット州ミネソタ州ではE10の販売が義務付けられている。

また、バイオエタノール用の穀物の作付面積が増大するにつれ、飼料用穀物の価格が高騰し、低所得者層の穀物の入手に影響が及びつつある[3][4][5]。そこで各国ではおが屑や間伐材等、従来はバイオエタノールの原料として使用されてこなかった資源的な制約の少ない原料を元にバイオエタノールを製造する技術が開発中である 

セルロース細胞壁の分解は熱と化学処理を伴い、従来難しい問題であった[9]。またセルラーゼで分解することも実施されていたが、前処理に手間がかかり大変であった[6]メリーランド大学カレッジパーク校のSteve Hutcheson はチェサピーク湾の沼地で発見されたバクテリア(サッカロファガス デグラダンス英語版)が強力なセルロース細胞壁の分解能を有する事を突き止めた[10][6]。Zymetis社ではさらに効率よく糖に変更するために遺伝子を組み換えて、72時間で1トンのセルロースバイオマスを糖に変換できる事を実証した 

また、シロアリ消化器官内の共生菌によるセルロース分解プロセスがバイオマスエタノールの製造に役立つ事が期待され、琉球大学理化学研究所等で研究が進められる

 

 

これまで微生物によるセルロースの分解には主に加水分解酵素セルラーゼ:注3)が関わるとされていましたが、近年、その効率を飛躍的に増大させる酸化的セルロース分解酵素の存在が注目されています。セルロースがこれらの酵素により分解されると、セロビオン酸ができますが(図1)、それがどのように代謝されるかは全く分かっていませんでした。そのような状況のもと、2013年に新しい酵素「セロビオン酸ホスホリラーゼ(CBAP)」が新潟大学大学院自然科学研究科の中井博之准教授らの研究グループにより発見されました。CBAPがセロビオン酸に作用すると、発酵に利用されやすい化合物に分解されます。この酵素は微生物による酸化的セルロース分解と発酵の代謝経路をつなぐ、いわば「ミッシングリンク(失われた環)」のような存在であることが解明されていました。
 今回、東京大学大学院農学生命科学研究科の伏信進矢教授らの研究グループは、中井准教授らと共同で、CBAPの立体構造をX線結晶構造解析(注4)により初めて解明しました(図2)。セロビオン酸と結合した状態のCBAPの構造を決定し(図3)、その作用メカニズムを詳細に明らかにしました。
 本成果は、学術的に興味深い結果がえられただけでなく、微生物を利用してセルロースを分解し、エタノールなどのバイオ燃料や様々な化合物を発酵生産する「バイオリファイナリー」(注5)の技術開発においても、重要な情報をもたらしました。