ブルーカーボン(海の二酸化炭素吸収量)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jahs/47/2/47_107/_pdf

 

人間活動によって大気に放出された二酸化炭素CO2)は,地球温暖化を促進させると指摘されており,地球規模での気候変化を引き起こす可能性がある。大気中のCO2濃度の上昇は著しく,かつ単調に増加を続けている。

IPCC 2013)によれば,CO2濃度は1750年頃の278 ppmから2011年には390.5 ppm40% 増加していることが報告されている。森林などの陸域生態系におけるCO2吸収量については盛んに研究されており,「グリーンカーボン」とも呼ばれている。一方で,海域のCO2吸収量については,それよりも大きく,2009年に発表された国連環境計画(UNEP)報告書において「ブルーカーボン」が唱えられ,海域のCO2吸収の重要性が指摘されている(UNEP, 2009)。

この報告書では,全世界から排出されるCO2量は7200±300 Tg-C yr1であり,そのうち森林など陸上が800±800 Tg-C yr1 (約11%), 海 が2200±400 Tg-C yr1 (約31%)吸収していると見積もられている。海域(外洋)でのCO2収支に関する研究は,国際的な研究が行われているのに対し,沿岸海域におけるCO2濃度分布や時間変動およびCO2吸収・放出量に関する研究が少ないのが現状であ

る。沿岸海域におけるCO2に関する研究は,最近になって盛んに行われるようになってきている。

例えばChen and Bortges 2009)による大陸棚におけるCO2の挙動に関する研究,遠藤ほか(2016)による都市沿岸域の人工湿地におけるCO2吸収・放出量に関する研究がある。また,Watanabe and Kuwae 2015)および桑江(2016)によるブルーカーボンを対象にした浅海域のアマモ場での研究がある。

沿岸海域は,陸域からの栄養塩や有機物が豊富に流入する水域であり,一次生産(光合成)が盛んであるため,外洋と比較して大きなCO2吸収が見込める。日本は,欧米に比べ,国土面積に対し広い沿岸海域を持っており,さらなるCO2吸収が見込めると考えられる。

また,大気CO2については,都市域でのCO2濃度測定は行われているが,海上大気のCO2濃度測定は皆無に近く,海上大気と海水中のCO2濃度を比較した詳しい研究は行われていないのが現状である。したがって,大気と海水中のCO2濃度との関係,また沿岸域におけるCO2収支を明らかにすることは,陸域-海域の炭素循環を明らかにするうえで極めて重要である。

沿岸海域のCO2濃度測定手法については,時間的・空間的な変動が大きいために測定が難しいとされてきた。著者は,CO2濃度の時間変動が大きい沿岸海域において連続測定が可能なCO2測定手法の開発を進めており,この測定手法を用いて,沿岸海域(大阪湾東部)のCO2濃度変動を現地調査によって明らかにした(藤井ほか,2013;藤井・藤原,2012;藤井ほか,2011)。

本研究では,これまでに大阪湾東部で行った連続観測によって得られた表面海水中および海上大気のCO2濃度データを解析し,大気–海水中のCO2濃度変動特性について明らかにする。

II.研究方法

1.大気中のCO2濃度の測定CO2排出量の大きな都市に隣接する海上大気のCO2濃度は,気象庁が長期的に測定している地点(岩手県綾里,東京都南鳥島及び沖縄県与那国島)のCO2濃度よりも高いと考えられる。しかし,その実態はよく分かっていない。そこで,大阪湾東部に位置する尼崎地点(Fig. 1St.A; 34°40′58.10′′N, 135°22′25.31′′E)において,ヴァイサラ社GMP343(非分散型赤外線吸収方式)を用いて,大気CO2濃度を20117月より1分間隔で直接測定している。測定精度は±1 ppmである。

また,本研究では,都市部沿岸域と人為的影響が少ない地点での大気CO2濃度を比較するために,気象庁が測定している綾里地点(39°02′N, 141°49′E)及び南鳥島地点(24°17′N, 153°59′E)のデータを取得し,解析に用いた(気象庁2016)。

 

 

ブルーカーボン

 

二酸化炭素は大気に放出されているだけではない。例えば2000年から2005年の5年間の平均で,人類の活動による二酸化炭素57%は大気中に放出されていたが,12.5%は森林に吸収されたとの報告がある。そして,残りの30.5%は海に吸収されていたのである。森林の二酸化炭素CO2)吸収量はよく知られており,グリーンカーボンとも呼ばれている。海の吸収量は,それよりも大きく,ブルーカーボンと呼んでいる。

  • 2009年に発表された国連環境計画(UNEP)報告書「Blue Carbon」においては,海洋で生息する生物によって吸収・固定される炭素がブルーカーボンと命名されている。 海の吸収量の1020%程度は,海藻等の海洋生物により海底堆積物として主に沿岸域で固定されると考えられており,沿岸域の環境保全は重要である。

  • 沿岸部の海草藻場は,1平方kmあたり83千トンもの炭素を地中に蓄えていることが報告された。一方,同じ面積の森林は、3万トンの炭素を原木部分に蓄えているだけだ。船舶への電力供給,海洋再生可能エネルギーおよび海水ヒートポンプ等の海洋関連二酸化炭素排出削減技術のブルーリソースだけでなく,ブルーカーボンも視野に入ってきた。

  • 沿岸域の海草の地中に1200年もの間,安定して炭素を蓄積してきた層。今から1200年前は,平安時代のはじめで弘法大師高野山を開いた年代。この時代から炭素を蓄積してくれていた。

海が吸収する二酸化炭素(ブルーカーボン)を担う海藻と海草の違いは大きい。後者はうみくさと読み,海から陸へと進化した植物の中で再び海に戻ったものだ。動物で言えばクジラやイルカのようなもの。海藻の根は岩などに接着するだけのものだが,海草は陸上植物のように地下茎から栄養を吸い上げる。

 

 

海は頑張ってくれているが,吸収された二酸化炭素に依って,ゆっくりと酸性化している。酸性化は,稚魚やサンゴの成育に影響を与え,種の多様性や養殖業,それに海に食糧や経済の基盤を置く国々は大きな影響を受けると考えられ,事態は深刻である。英国の研究者らが2013年に発表した第19回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)報告書によると,海の酸性化は過去3億年で最も速いペースで進んでいるとみられている。

  • 海の中に海藻類が生い茂り,多種多様な海洋生物が多いということは,海の中に固定化された炭素が多いということである。海藻も魚も炭素でできており,これらがいなくなることは空気中の炭素が増えるということになる。同じように大地に緑が多いということも,そこに固定化された炭素が多いということである。草木も炭素でできている。空気中の炭素は,メタンや二酸化炭素といった地球温暖化物質である。空気中の炭素を減らすためには,青い海と緑の大地を守ることが大事だ。

  • 海藻や植物プランクトン等が吸収する二酸化炭素ブルーカーボンは、地球温暖化防止のクレジットとして認められていない。ただし、海藻や植物プランクトン等にクレジットという価値を持たせ保護していくことは、沿岸域の生態系および環境保全に重要なことは明らかである。

    このため、この量をクレジットにすることを自治体等で決め、クレジットへの資金供給を行う必要がある。地球温暖化防止のクレジットとして認められている海洋関係のエネルギー削減技術等のブルーリソースと、海藻や植物プランクトン等のブルーカーボンを一緒に扱うことによって、全体として資金に裏打ちされたクレジットの仕組みが成立することになる。 





人工海底 山脈 による二酸 化炭素 固定の可能性

. ま とめ

https://www.jstage.jst.go.jp/article/prooe1986/24/0/24_0_387/_pdf

全 球,特 に海洋 にお ける炭素 循環 の研 究の重 要性が叫 ばれながら,その詳細 は明らか にされておらず,依然,世 界 的な重 要な研 究課題 になっている.人 工海 底山脈 による基礎生産 の増加 と,これに伴う海 洋での二酸化 炭素 固定の可能性 は,開 発 当初から提案 され てきたが,議 論が不足していた.

2007年 に発 表されたIPCCの 最 新の報告 を基 に数十~数百年の炭 素循 環を前提 に考えると,人 工海 底 山脈により自然エネルギーを利 用して真 光層 に栄養 塩類 を湧昇させ基礎 生産を増加できれ ば,安 全な食糧を持続的 に供給 できると同時に,二 酸化 炭素を深海 に固定できる可能 性が明らかになった.し かし,栄 養 塩類 の濃度 、循 環量 、貯蔵 量 に関するデ ータが不足しているため,栄養塩 類の持続 可能性 には課題が残った.さ らに議 論を進めるためには,基 礎 生産速度を含 む栄養 塩類の循環 についての知見の収 集,人 工海底 山脈による基礎 生産 の増加 量を科学的な方法で定量化 する必 要がある.

そのためには,複 数海 域で次 に示すような調 査 ・研 究 ・開発を続ける必 要がある.

(1)人工海 底 山脈 事 業 による基礎 生 産の増加 量 と炭素固定量を事業 前に高精度 に予測す る技術.

(2)事業 後の基礎 生産 増加 量,深 海 に固定される炭 素量,大 気 および海 洋表 層の 二酸化 炭 素分圧 などを高精 度に評価す る技術.

(3)建設 時 に発 生す る二 酸化炭 素 量と,建 設後 に深海に固定される炭 素量の技術面,経 済面,政 策面での評価 技術.

5. お わ りに

海洋基 本法 第二条 には,「海 洋環 境の保全 を図りつつ海洋 の持続 的な開発 及び利 用を可能 とすることを旨として,そ の積極 的な開発及 び利 用 が行 われ なけれ ばならない」と謳 われている.革 新的な重 要技術 として総合科 学技術会 議に提案された人工海底 山脈 を,整 備 ・活 用することにより,食 糧 自給率 の低 い我 が国の重 要課題 である海 洋 での食 糧生 産が 図れ る.同 時 に,こ れが二酸化炭素の 固定 につながる可能性 が示された.

古代 文明 が陸上 で農 業 の技術 と生産 基盤 を営 々と築 いてきたように,人 類 に残 されたフロンティアである海洋 を,新 たな技術 により,食糧生産,二 酸化 炭素 固定,環境 保全,リサイクルの場として活 用すべきと考える.環境 に配慮 し,細 心の注意を払い海 洋の 自然エネルギーと生態 系を利 用して,海 洋 での食 糧生産 基盤を国民が真 に求める社 会資本 として整備することが求められている.本 稿が海洋 における新たな食 糧生産 と二 酸化炭 素固定の議 論の発端 になれ ば幸いであ

 




人類滅亡の序曲か?!米国沖でメタンハイドレート融解

 

 

 

ぞっとするニュースだ。米国ワシントン大学の調査によると、ワシントン州オレゴン州の沖合の海底でメタンガスの大量放出が起きているらしい(関連情報)。メタンガスとは可燃性の天然ガスで、世界各地の大陸棚付近の海底には、高圧・低温により氷状になったメタンが大量に固定されている。これがいわゆるメタンハイドレートだ。これが温暖化により溶けだしているようだ。もし、世界各地の海域でメタンハイドレートの融解が始まったら、最悪の場合、人類滅亡をもたらす大災厄となりうる。今回の大量放出が即、そうした状況につながるわけではないだろうが、危険な兆候として、注視すべきである。

海底に眠る膨大な量のメタンハイドレート。地球環境にとっては、それは爆弾のようなものだ。メタンガスは、CO2(二酸化炭素)の20倍以上という強力な温室効果ガス。もし、温暖化の進行により、今回のようなメタンハイドレートの融解が世界各地の海域で起き、大量のメタンガスが大気中に放出されるような状態となれば、温暖化の暴走(ポジティブ・フィードバック)を引き起こすことになるかも知れない。つまり、放出されたメタンにより、地球温暖化が加速、海水温上昇により、さらなるメタンが放出され、それが温暖化をより加速させるという悪循環に陥る、ということである。

温暖化の暴走が何をもたらすか。最悪のシナリオとしては、いわゆるペルム紀の大絶滅」と同じことが起きるというものだ。今から、25100万年前、地球史上最大規模の火山活動によって、地球全体の気温・水温が上昇、さらに大量に発生したメタンガスが酸素と結合、「酸欠」状態になって、全生物種の90%以上が絶滅するということがあった。また、英国レスター大学の研究チームは「温暖化の進行で平均気温上昇が6度以上になると、海中の植物性プランクトンが酸素を作れなくなる」と指摘している。地球上の大気中の酸素の大半を放出しているのは、これらの植物プランクトンだ。つまり、温暖化の進行で人類が窒息死して滅亡するということもあり得るのである

温暖化の暴走が起きるのか、ということについては、専門家の中でも意見が分かれている。ただ、ペルム紀に実際に起こったことであり、人間活動による温暖化進行によって、絶対に暴走が起きないという保証もない。だからこそ、自然エネルギー普及・省エネ推進を行い、森林の乱開発を止めるなど、温暖化をこれ以上、進行させないための努力を、これまで以上に尽力する必要がある。

だが、その地球温暖化対策でも、日本においては、安倍政権や大手電力会社などの振る舞いが問題となっている。火力発電の中でも、最もCO2を排出する石炭火力発電を推進。現在、国内で48基の新規建設が計画されているほか、海外にも石炭火力発電を輸出しようとしているのだ。これまで、温暖化対策に後ろ向きだった米国ですら、石炭火力発電規制を決めたという中、あり得ないKYぶりである。

残念ながら、日本では温暖化対策に対する熱意が官民ともに失われ、先のパリでのCOP21気候変動枠組条約21回締約国会議)でも、小池百合子環境大臣が「交渉会場近くの日本政府事務局に丸川大臣はじめ担当者を激励。皆、不眠不休ながら国益死守に元気いっぱいでした」とツイッターに投稿していたように(関連情報)、日本政府代表団は、いかに日本の温室効果ガス排出削減の負担を軽くするかということに腐心していたようだ。だが、温暖化はその進行を放置すれば、人類を滅亡させうる脅威へと発展する。温暖化の暴走が始まってからでは、手の打ちようがない。今からでも、できうる全ての対策を本気で行うべきなのだろう。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2101/22/news105.html

イーロン・マスク氏、賞金1億ドルの二酸化炭素回収技術コンテスト開催へ

 

世界一の富豪イーロン・マスク氏は121日(現地時間)、自身のTwitterアカウントで「最高の二酸化炭素回収技術に1億ドル(約104億円)の賞金を提供する」とツイートした。詳細は来週発表するとしている。

 二酸化炭素回収技術とは、地球温暖化の原因になる二酸化炭素を排出源から分離・回収する技術(環境省より)。これまでにもX-Prizeなどが同様のコンテストを開催してきたが、1億ドルの賞金は破格だ。

 20日に発足したジョー・バイデン新政権は7つの優先事項の2つ目として地球温暖化問題対策を掲げている。